息子への手紙

T主

2010年12月06日 11:16

俺はいつ死んでもおかしくない趣味を持ってるから、
毎年この時期には家族の誰かに宛てた手紙を書きたくなる。
これから、シーズン本番を迎える狩猟という趣味。
この手紙シリーズは、今のところ遺書と同じ感覚かもしれないが、
いままでは見せないで済んでいる。それに超したことはない。

さて、昨日の戦いの興奮が冷めやらないが、
自分でも分かっているだろうけど、君は決して上手い戦い方じゃない。
どんなにボディーを叩かれても、決して崩れない強靱な精神力が
今の君を支えている。
上段回し蹴りなどの華麗な技を次々と決めて勝利するスタイルが天才ならば、
君は、打たれても叩かれても、前へ前へ出て行く、努力家というべきだろう。
地味な基本技を磨くことが、今の君の年齢には一番大切なことであり、
叩かれても屈しない強い精神力こそが、君の人生にとって、今後も必要なはずだ。
指導者達は、勝負結果にこだわるから、君にはもっと楽な勝ち方をさせたいはずだが、
君はもっともっと、今の自分のファイトスタイルに磨きを掛けるべき時期だ。
勝ち方にこだわる戦い方は、黒帯が目前に迫ってきてからでも遅くない。

今年は全国大会に行けなかったけど、君は敗北を味わってからの起きあがり方、
立ち上がり方は、間違っていなかったし、その経験から、さらに強靱な心を鍛錬することが
出来たのだから、空手から得ることのできた経験は大きなはずだ。
あの短い試合時間に、積み上げてきた全てを出し切ることは難しいことだ。
でも、迷うことなく進んで欲しい。

君は俺にとって掛け替えのない存在だ。
俺もまた、君がそう言ってくれる存在となれるように、自分の道を進む。
お互いに進んでいく方向は違うかも知れないが、心は同じで居たいと願う。
そう思った試合を見せてくれて、本当にありがとう。
勝敗にこだわるのではなく、熱い心が伝わる奇跡を、これからも見させて欲しい。
君に出会えて、君の父になれたことも奇跡なのだから。

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